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たまに何かを生み出す。そんな工房。
プロフィール
HN:
ふぐ
年齢:
35
性別:
男性
誕生日:
1989/02/03
職業:
学生
自己紹介:
サボり気味大学生
最新CM
[07/19 弥太郎]
[06/07 弥太郎]
[05/25 しもつきん]
[04/23 れざ]
[02/16 弥太郎]
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「そういうわけで、その居酒屋で働くことになったの」
『へえぇ。ま、どんくさいあんたをかばってくれた人なんだから、たぶん大丈夫だと思うけど』
「どんくさいって…産んだのはお母さんでしょ…」
『知らないわよそんなの。あれだけ気を付けろって言ったのに人にぶつかるなんて。挙げ句に財布も落とすし…』
「も、もう!その話はもう良いでしょ!」
『そういえば、その居酒屋で働いてる…高梨さんだっけ?脈ありなら今度あたしに紹介sh』
 ガチャン!
「…もう、何言ってるのよお母さん…」
 顔面真っ赤にして呟く私。
 昨日起こったことを電話で母親に話したら、案の定からかわれてしまった。
 でも、財布を無くしたこと伝えるためには話さなければいけなかったわけで。
「次財布無くしたら仕送りなしかぁ…。死守しなきゃ」
 と、心に誓うのでした。

 結局私は【富士】で働くことになった。
 なってしまったの方が正しいかもしれないけど…。
「千鶴さんも俊介さんもはちゃめちゃなんだもんなぁ…」

 ○

 時は、私が居酒屋に連れられたところまで遡る。


「自己紹介がまだだったな。あたしは藤山千鶴。で、ここの店長」
 そういいながら、藤山さんは親指で居酒屋を指した。
「は、はぁ」
 なんだかお母さんみたいな人だなぁ。
 その時、お店の扉が開き、男性が出てきた。
 ガラガラ
「先生?客で…」
 言いかけて、
「…犯罪はいけませんよ?」
「誰が犯罪か」
 藤山さんは素早くお玉を取り出し、男性に向かって勢い良く振り下ろした。
 が、
 カィンッ
 男性は持っていたお玉で受けとめた。
「ほぅ…やるようになったじゃないか」
「ふっ…伊達に5年間殴られ続けてませんよ」
 不適に笑う男性。
 …あれ、私置いてけぼり?
「あ、あの…」
「ん?そういえば先生、この子は?まさか本当に犯罪に走ったわけじゃないですよね?」
「当たり前だ。ウチの新しい従業員」
 あぁ、やっぱり決定なんだ…。
「えぇ!?」
「…何を驚いてる」
「え、だって…君、脅迫されてるんだったら素直に言って良いんだよ?」
 カィンッ
「~~~っ」
 小気味良い音が男性の頭から響く。
 今度はお玉を避けきれなかった模様。
「な、なにすんですか先生!」
「お前はあたしをどんな人間だと思ってるんだ」
「傍若無人で我が道を突き進む我儘一直線な年m」
 カィンッ
「~~~~~っ」
 頭を抱えて転がり回る男性。
 これ以上叩かれるのも可愛そうなんで弁解することにした。
「あ、あの…確かにちょっと強引な気もしましたけど、助けていただいたし…」
「先生が…人助け?あぁっ!すいませんすいません!」
 お玉を構えた藤山さんを目にして即座に謝る男性。
「それで…その…恩もありますし、お金も必要だし、雇ってくださるなら…」
「…本気なんだね?」
 男性はゴクリと唾を飲み込み問いただす。
 な、なんでそんなに慎重なの?
 だが、男性の後ろで藤山さんが、拒否は許されないと言わんばかりのオーラを醸し出しているのを目の当たりにして断れるわけもなく。
「は、はい」
 やっぱり流される私。
「…わかったよ。君の決意は固いみたいだしね」
 実際はそんなに固くないですよ…。
「僕は高梨俊介。俊介で良いよ」
「白鳥深雪です。よろしくお願いします」
 でも、やるからにはしっかりやらないとね。
「うん、じゃあ早速今日からよろしく」
「え、もうですか?け、契約とかは…」
「そんな面倒なもんなしなし。【富士】は先生の自営業だからチェーンとかないし」
 ちょっと待ってて、俊介さんはそう言ってお店の中へと消えていった。
 なんか色々めちゃくちゃだけど、それでお店成り立つのかな…。
「金ならちゃんと出すから心配するな」
「店長の藤山さんがそういうなら別に良いんですけど…」
「千鶴でいい。その名字は嫌いなんだ」
「わ、わかりました千鶴さん」
『深雪ちゃーん、ちょっと中までよろしくー』
 お店の中から俊介さんの呼ぶ声が聞こえた。
「あ、はーい」
 声に呼ばれて私と千鶴さんはお店の中へ。

「な、何ですかこれ…」
「ん?【富士】の制服だよ」
 確かに服。でもこれは…
「なんでメイド服なんですかー!?」
「高梨の趣味だ。思いっきり笑ってやれ」
「えー、いいじゃないですかメイド。深雪ちゃん嫌い?」
「嫌いってわけじゃないですけど…制服ってことは、千鶴さんも着るんですか?」
 ピシッ
 場の空気が固まった。
「あ、あれ…?」
「み、深雪ちゃん…。君はなんて恐ろしいこt」
 ガァンッ
 いつもと違う鈍い音。
 千鶴さんはフライパンで殴っていた。
「あの…大丈夫ですか…?」
 あ、白目むいてる…。
「放っとけ」
「は、はぁ…」
 とりあえずコレ(メイド服)、どうしよう…。
 ていうか、今日から始めるはずなのに、俊介さんのびちゃってるよ。
「今日はもう帰っていいぞ」
「え?で、でも…」
「こいつがこんなじゃ仕事できないだろ」
 でも俊介さんをのびさせたのは千鶴さんじゃ…。
「なんか言ったか?」
「い、いえ!」
「…とにかく、今日はもういい。変な奴らに絡まれてたし、疲れてるだろ。急に連れてきて悪かったな」
「あ…いえ、こちらこそありがとうございました。じゃあ、お言葉に甘えて今日は失礼します」
 ぺこっと頭を下げる。
「あぁ」
 千鶴さんも片手をあげて見送ってくれた。

 ○

 そんなこんなな経緯で、【富士】で働くことに。
 なんだか凄く不安だけど、何事も経験だと思ってやることにしました。
 …人間ポジティブが大事だよね。



 
 ちなみに後日、やっぱり制服はメイド服に決まりました。
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その日、私は引越しの準備も全て済み、あとは家で入学の日を待つだけのはずでした。
「おぅ姉ちゃん、何処に目ェとけとんねん」
「え、えっと…」
ありきたりな台詞とともに、二人の男の人に囲まれる私。
そういえばお母さんが上京する前に、
『くれぐれも人相の悪い人に近づいちゃダメヨ。ましてや肩ぶつけるなんてないようにね』
なんて言ってたのが懐かしいなぁ。
「おい聞いてんのか、姉ちゃん」
「ご、ごめんなさいごめんなさい」
現実逃避なんてしてる場合じゃない。
どうにかしてこの場を切り抜けないと…。
「あ、あの…私、お金持ってなくて…」
上京初日に財布を失くす私。ド、ドジっ娘じゃないもんっ。
「あぁ?じゃあ体で払ってもらうしかねぇなぁ」
男の口端がニタァと歪められる。
あ、終わった。お母さん、先立つ不幸をお許しください…。


ドジっ娘物語(仮) END


いやいやいやいや!まだ死にたくないですから!
あぁ、どうしよう…。本当にこのまま売春とかさせられちゃうのかなぁ…。
「おい、どけ」
その時でした。二人の男の前に、重そうな鞄を抱えた女の人が。
「あ?」
男たちは二人そろって振り返った。
「顔だけじゃなくて耳も悪いのか?どけって言ったんだよ」
女の人は不機嫌そうに言い放つ。
「な…っ、テメェ!!」
いきり立ったチンピラの片割れが、女の人にも拘らずいきなり殴りかかった。
「あっ…!」
思わず大声を上げてしまった。
いつの間にか、様子を伺うように野次馬が集まってきていた。
カィンッ
いい音と共に片割れが白目をむいて倒れた。
「あ、あれ…?」
一瞬何が起こったのかさっぱりだったが、女の人をよく見てみると、
「フ、フライパン…?」
そう。なんと片手にフライパンを持っていた。いつのまに…。
「な、な、な…」
状況が把握しきれていないようなもう一人の男はもう大混乱だった。
「おい」
「ひっ」
声を掛けられた男は竦みあがった。
「通行の邪魔だからそいつ連れて帰れ。それとも…」
フライパンを肩に乗せ、物凄い目で男を睨む。
「お、覚えてろyいってええええええ!!」
女の人はフライパンの入ってた鞄からお玉を取り出し、相手に向けて投げた。
す、捨て台詞くらい言わせてあげても…。
男は倒れた片割れを担いで命からがら逃げていった。
「…」
「…」
ど、どうしよう…間が持たない…。
観客もシーンと静観している。
スタスタスタ
え、そのまま行っちゃうの!?
「あ、あのっ」
「ん…」
あ、なんとか振り返ってくれた。
「あの…あ、ありがとうございました!」
「…」
女の人はじっとこっちを見ている。
「え…あ、あの…?」
「歳は?」
「へ?あ、20歳です。今年21ですけど…」
「名前は?」
「白鳥深雪です」
な、名前と歳なんて聞いてどうするんだろう…。
「よし、採用」
「…え?」
言うが早いか、女の人は私を肩に抱きかかえ歩き出した。
「へっ!?あ、あのっちょっと!?」
何が何だか分からない私を余所に、女の人は聞く耳持たずに歩いていく。
野次馬もポカーンとしてその場に立ち尽くしていた。
「ど、何処に行くんですか!?せめてそれだけでもっ!」
「着けば分かる」
「え、えぇっ!?」
周りの奇異の目をものともせず、ずんずんと歩く。
なんか一部の人はすごい微笑まし気な目でこっちを見ていた。



「居酒屋…【富士】?」
やっと降ろされたと思ったら、着いたのは居酒屋。
「あ、あの…ここは…?」
「あたしの店だ」
「は、はぁ。え、採用ってまさか…」
「今日から従業員ってことでよろしく」
「…え、えぇ!?」

上京初日にまさかこんなことになろうとは思いもしませんでした…。
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